「
ブルゴーニュはワインの王、
ボルドーはワインの女王」と言われるそうです。

パリの南東に広がる丘陵地帯は、豊かな自然に恵まれた「王様」の故郷です。
ピュリニー・モンラシェ村
(Puligny-Montrachet)に1635年から続くワイナリーがあります。
18代当主オリビエ(Olivier Leflaive)さんは、ワインについてユーモアたっぷりにかつ熱く語ってくれました。
「コーラは世界中どこで飲んでも同じ味。
ワインは、ブドウ・それを育てる土・天候・作り手によって全く違う。毎日飲んだら毎日味が違う」
確かに、体調や誰とどこでどんな気持ちで飲むかによっても味は違いますね。

17度に管理された部屋では、樽の中で熟成中のワインの息使いが聞こえました。
びっしり積み上げられた樽が、木片だけで簡単に支えられているのにも驚きました。
美味しいワインは美味しい料理と出会ってこそ、引き立ちますね。

タルタル(生の牛肉)の上に牡蠣のムース(まさに泡そのもの)・周りに淡いピンク色のワインビネガー生牡蠣を飾って
鴨の付合せに、輪切りのキンカンをあしらうと絵のよう
イチジク・アイスクリームの上に立体的にチョコレート、パウダーシュガーを粉雪のように
薔薇のムース(写真なし)は、まるで「天国のデザート」-遠慮深く口に広がるやさしい甘さでした
ロマネ・コンティ(Romanee-Conti)は
世界一有名なワイナリー。
ボーヌ・ロマネ村(Beaune)のたった1.8ヘクタールのブドウ畑で、年間約6000本しか産出されず、安くても30万、良作年のものは100万円以上での取引も。
収穫は終わっていましたが、
雨の中で記念写真を
1日付合ってくれたドライバーのミゲルは、
チリ人でした。
1970年史上初の自由選挙による社会主義アジェンデ政権成立時は、小学生。
たった3年で、米国に後押しされたピノチェト将軍に打倒され、その後16年間軍事独裁政治が続きます。
1973年
9月11日、軍に包囲され執務室で自殺した(と言われる)アジェンデ大統領の、ラジオを通しての最後のスピーチを今でも覚えているそうです。
ミゲルが20才の時、ギリシャで船乗りになり世界を廻り、その後チリで働いた後、ベルギーでも仕事をしたそうです。
今はフランス人の奥さんもいて、パリ在住。
「フランス人は冷たい。仕事仲間でも話しかけるのは、いつも自分から。人と関わらないで過ごすなんて、人生を無駄にしているとしか思えない」
「チリなら、道端で会った知らない者どうしでもどんどん話がはずんで、すぐ仲良くなる」
「平和になったチリに帰りたいけど、フランス人の妻がいるから」
ハンサムで優しいフランス人と思っていた彼の、意外な過去でした。
話は変わりますが
、「新大陸ワイン」として
チリワインは人気上昇中で、今や世界第5位のワイン輸出国だそうです。
南北に長い国土のため、多様な品種の栽培が可能で、熟成期間も比較的短くてすむという見方もあります。
欧州産ワインの世界市場でのシェアが下がる一方、、「新大陸ワイン」は着実にシェアを増やしています。
フランスの小規模ワイン農家は大きな打撃を受けているとか。
オリビエのような働き者の笑顔が曇るようなことになりませんように。