個展を前に、
髙橋協子さんの工房でお話をうかがいました。
協子さんは、幼い頃から、人形遊びが大好きで、
小道具に、楊枝を削って色鉛筆セットを作ったりしたこともあるとのこと。
10年以上にわたって毎年
、「陶のお雛様」の新作を発表している協子さん。
雛段に並ぶ小物作りの細やかさは、この頃からのようです。
小学1年生で
「モノ作りの仕事がしたい」と思い始めました。
きっかけは、担任の先生が絵や工作でほめてくれたこと。
大人のちょっとした言動が、子どもの将来を決めることもありますね。
小3での「虫歯予防ポスター」の入賞は、子どもながら
一つの転機でした。
まじめな協子さんには、それがかえって重荷となり、
小5で絵が描けなくなってしまったそうです。
その頃、職人の世界を知り、中3で
伝統工芸を志すようになりました。
オリジナル作品の創作ではなく、主に技術の継承をする「工芸」の世界。
後継者不足と聞き及び、その手伝いをしたいとの思いから。
今でも、人の手伝いをよくしている協子さんらしい発想です。
県立の新設高2年の専門コースで、デザイン専攻。
塑像は専門外だったのですが、どうしてもやりたくて、
夏休みと放課後の2ヶ月かけて、自主的に首像の彫塑作成。
それが入賞したことが、
第2の転機。
紛れもなく、自分自身で勝ち取った賞が、大きな自信になりました。
一方では、歴史研究部に所属し、顧問の先生の指導で
土器作りを始め、
立体を作ることの楽しさに目覚めます。
美大では
木工専攻しながら、サークルでやきものを始めました。
やきものを仕事にしたいと決めていたからこそ、
大学では違う素材の経験もしておきたいと思ったのです。
卒業後、縄文土器のような作品を作る陶芸家が笠間にいると聞き、
堤綾子さんに弟子入り。
「土の性格によって、作るものを変えていく」
「やきものの原初の形―土が薪によって焼かれていく」ことに感動。
穴窯で大胆な焼締め作品を作る堤さんの元で3年間修行。
土をこよなく愛する師匠から、 多くを学びました。
その後、
矢崎春美さん・
黒田隆さん・
外山亜基雄さんのスタッフとして、
食器作りへ。
協子さんのライフワークとして、
龍・鬼などの民話をテーマにした作品作りがあります。
もともと昔話が好きだったのに加えて、
天狗伝説のある愛宕山(あたごさん)のふもとが今のお住まい、
というご縁も大切にしています。
「やきものを通じて自己表現するというより、
物語の断片を形にし、見た人に物語を感じてほしい。
イメージのふくらむ世界を届けたい」
「デザイン画は描かずに、手に任せて作っていく。
立体作りが好きなので、絵だと物足りない。
裏側まで作りたい」
「素材の力によって、形・絵付けも変わっていく」
「粘土で、手に任せて形を作っている時が一番楽しい」
自己主張というより、
受け手に心地よさ・やすらぎを届けたいという、思いやりのモノ作り。
いつも自分より人のことを先に考えるやさしさの人。
柔らかなまなざし・話し方の協子さんといると、穏やかな気持ちになります。
協子さんの作品に出会ってから、約20年。
作品の幅はどんどん広がっていますが、本質はずっと変わらず。
協子さんのあったかい世界が、
11/29(火)から「舞台」に広がります。